セールにならないモノを選んで買うことがサステナブルに繋がる理由[編集人ブログ]
デザイナー取材、ニューバランスのRESTOCKアイテム、パタゴニアのバギーズショーツ購入を通して感じたコト
定価の価値は数ヶ月?
こんにちは、久しぶりの編集人ブログです。うっかりすると思ったよりも時間が経っているのもコロナ(渦)下の特徴かもしれません。
そうこうするうちに早くも春物のSALEの告知を見る機会が増えてきました。
編集人が時々覗いているSSENSEもSALEがスタート。50%OFFになっているものもあります。
感覚的にはまだ春になったばかりじゃないかと思うのですが、コロナのこともあって苦戦しているアパレルとしては、早めのSALE切り替えはやむなしの方策なのかもしれません。
ここ数年、編集人の買い物の傾向が変わってきました。それは「できるだけSALEになるものを買わないようにすること」。
欲しかったものがSALEになることは正直嬉しいです。 定価3万円するものが半額SALEの1万5000円で買えれば、1万5000円を節約できたような気分。
でも考えてみればそれは、「そのモノ自体の価値」がすでに半額に値下がりをしていることでもあり、多少複雑な気持ちは残ります。
「定価」というのもまた怪しいもので、「アパレルの価格はそもそもSALEを前提に値付けをしているんじゃないか」とか、「過剰在庫じゃないか」など長年指摘されていますが、以前大手アパレルの人に「ファミリーセールの売り上げはバカにならなくて、収益の柱のひとつなんです」という話を聞いた時に、あながち指摘は間違っていないなと思った記憶があります。
編集人はアパレルに勤めた経験もないので、値付けや生産量、SALEに至るまでの流れの話に根拠はないですが、ひとりの消費者の感覚として考えれば、わずか数ヶ月で定価のものが何割引にもなるのは、定価で買った側的に虚しいのは間違いありません。言い換えれば、そのモノは「そもそも定価の価値は数ヶ月しかなかった」ということになります。
取材を通して感じたデザイナーたちのSALE感の変化
SALEそのものを否定しているわけではありません。「これくらい売れる!」と踏んだものが売れないことは当然あるでしょうし、全て気持ちよく完売なんて難しいのも分かります。お店やメーカーとしては在庫を抱えるわけにはいかないので、SALEをするのは仕方ない。
少し前に[BAMBOO SHOOTS(バンブーシュート)]のディレクター、甲斐一彦さんを取材した時に、「セールは僕らにとって屈辱なんですよ。店頭で反省会と懺悔をやっているようなものですから」とお話しされていたのが印象的でした。
[INTERVIEW]アーバンアウトドアスタイルの伝道師、BAMBOO SHOOTS(バンブーシュート)甲斐一彦の頭の中
https://in-general.com/editorial/interview-bamboo-shoots-nakameguro-kai-kazuhiko/
甲斐さんの言葉通り、真面目にやっているお店ほど「SALEは仕方なくやっている」感覚なのだと思います。逆に言えばSALEが慢性化しているところは、ある種エンターテイメント・イベントのような感覚に陥ってしまっているのかもしれません。
これも先日[FACTOTUM(ファクトタム)]のデザイナー、有働幸司さんを取材していて感じたことですが、[FACTOTUM]でも「SALEをしない定番を増やしている」という話が印象的でした。
[INTERVIEW]変わったこと、変わらないこと。FACTOTUM 有働幸司の現在地
https://in-general.com/editorial/interview-factotum-koji-udo/
また、昨年取材させていただいた[Maison MIHARA YASUHIRO(メゾン ミハラヤスヒロ)]の三原康裕さんも「MY Foot Products(マイ フット プロダクツ)の商品はSALEをしない」というお話をされていて、経営感覚のあるデザイナーさんほどSALEに対しての疑問を持ち始めているのが取材を通じて分かってきました。
[inGENERAL interview]メゾンミハラヤスヒロ My Foot Products 三原康裕インタビュー
https://in-general.com/editorial/interview-mihara-yasuhiro-my-foot-products/
REPEAT(リピート)とRESTOCK(リストック)
少し横道に逸れましたが、そんなことを考えながら編集人は「できるだけSALEにならないもの」を選ぶようになりました。逆にプレ値が付くようなものも買いたくない派。プレ値はむしろ供給不足で、そこにはブランディングの名の下にノイズを上げようとする魂胆にハマってしまったように感じるし、着用するものでいちいち目立ちたくないという個人的な感覚もあります。(でも同じ価値観の人に気づいてもらうのは嬉しかったりする)
ファッションの面白さ、楽しさというのは「人と被らないこと」にあったりもすると思いますが、個人的にはそういう楽しさは卒業気味というか、そもそもそんなに求めていなかったような気がします。
そんな気持ちで改めて見回してみると、常に値落ちのしない商品というのは世の中に結構あります。継続的に人気があるものは、シーズンで生産できる数に限りがあるとしても、次のシーズンでREPEAT(リピート)されたり、RESTOCK(リストック)されます。
先日編集人は、[New Balance(ニューバランス)]の公式サイトで“ML2002R”というスニーカーを購入しました。
サイトを見てまさに一目惚れ。「SOLD OUT」になっていたのですが、欲しいサイズとウイズ(幅)を入力すると「再入荷申し込み」というものが表示されたので、申し込んでおきました。数ヶ月後、忘れた頃の朝にメールに入荷連絡があり、そのまま購入。直後に見たらまた「SOLD OUT」になっており、後日他のサイトを見回すと、未使用品中古がプレ値になっていたりもしたので、かなりの人気モデルだったことを知りました。
「定価で買えた自慢」をしているわけではなく、「こういう売り方っていいよな」と素直に感じた一例です。
「いつ入荷になるかは分からないけど、とりあえず買いたい人は予約しておいて」、というスタンスは、個人的にはいい方法だなと思います。「すぐに欲しい!」という時は不向きですが。
Patagoniaのバギーズショーツに見るサステナビリティ
また最近、夏に備えて[Patagonia(パタゴニア)]の“バギーズショーツ”の5インチのモデルを購入しました。
これも昨年あたりから購入を考えていたものですが、実際にお店で試着をしてみて「なるほど」と人気の理由が分かりました。とにかく形がいい。サイズ感とシルエットが抜群なので街でも穿けるし、速乾性もあるので運動の時に使ってもいい。特殊なポケットの仕組みもあって、水着としても使えるようになっているのもありがたい。1982年から40年近くロングセラーなのが頷けます。
[Patagonia]はサステナビリティの観点からも常に注目されているように、この“バギーズショーツ”もリサイクル・ナイロン100%製になり、さらにモノとしての説得力が増している気がします。
そしてその価格統制ぶりにも感心しました。試しに“パタゴニア バギーズショーツ”で検索してみると、どのサイトの価格も一定。
BEAMS Online
<MEN>patagonia / Baggies Shorts
時期のせいもあるかもですが、どこで買っても同じ価格で買えるのはフェアだなと思いました。より安い買い物をするために、試着してネットで買う“ショールーミング”のような行為もしなくて済む。これなら卸先のショップも安心して売れるわけで、結果的に各お店の持続性にも繋がってくるわけです。
サステナビリティというと、最近は「“サステナブルな素材”を使っていれば合格」という認識になっているような側面も感じるのですが、それって「エコロジー」の話。
エコロジーの議論はとっくの昔からあるわけで、作られ方だけじゃなく、売り方まで含めての持続性がないと「サステナブル」とは言えないんじゃないかと思います。[Patagonia]の売り方には、そういう意味でも包括的な視点を感じるのです。
2次流通のことまで考えれば
そして今は「2次流通」も重要な時代です。「メルカリ」、「ヤフオク」などの個人売買や、リセールのマーケットも成熟しているのは、サステナビリティの観点からも良いことですが、いざ出品を見てみると、そもそも市場価格が安定しているもの、つまりSALEになることがないものほどちゃんとした価格で取引されています。
例えば先ほどの[Patagonia]の“バギーズショーツ”。中には定価以上の価格を付けているフトドキな人もいますが(笑)、概ね価格は6000円代。つまりもし穿くのに飽きて売ろうとしても、それなりの価格で売れるのです。これは中古車と一緒ですね。リセールの価格を考えてクルマを買う人は賢いと思います。
[Patagonia]の公式サイトでも「WORN WEAR」というページがあり、そこにはこのように書かれています。
なぜギアの寿命を伸ばすべきなのでしょう? なぜなら私たちが惑星のためにできる最善のことは、消費を減らし、すでに所有している衣類をより長期間活用することだからです。まずは消費を減らす。必要ないものは買わない。次は修理。まだ使えるものは直して使う。または再利用したり、共同使用することもできる。そしてついにこれらの選択肢がなくなったとき、リサイクルすること。 私たちは、皆さまの購買を削減するためにギアを長持ちさせるお手伝いをします。私たちが会社としてできる最も責任あることのひとつは、長持ちする高品質の製品を作ることで、それにより皆様は消費を抑えることができます。衣類の寿命をわずか9か月間伸ばすことにより、炭素排出、水の使用、そして廃棄物のフットプリントを20%〜30%も削減できます。
リペアやリサイクルをこれだけ推奨している企業というのも非常に珍しいと思いますし、勇気の要ることだと思います。しかし継続的にこういうメッセージを発信していることが結果的に[Patagonia]というブランドの価値を高めています。「[Patagonia]を着るってクールだよね」という認識は、さらに広がっているように感じます。
[Patagonia]だけでなく、今はさまざまな形でファッションのサステナビリティへの追求は始まっていますし、特に若い世代を中心にその考えは浸透しつつあります。作る側、売る側もそうですが、買う側も「安易にSALE品を買わない」と思う人が増えれば、徐々に色んな無駄は減っていくように思います。
できればこの『inGENERAL』では、そういう価値観を発信できる場所でありたいなと考えています。杓子定規に「これはサステナブルかどうか」を判断するわけではないですが、できるだけ「モノとしての継続可能性」にはこだわって発信を続けたいと思います。(武井)
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