Follow us

Mail magazine


 

Fashion

2021.04.26

[INTERVIEW]
変わったこと、変わらないこと。FACTOTUM 有働幸司の現在地

テーマ性深いコレクション、丁寧な服作り、サステナビリティ。FACTOTUM(ファクトタム)の有働幸司が語る17年。

[INTERVIEW] 変わったこと、変わらないこと。FACTOTUM 有働幸司の現在地

Content

文学性とファッションの交差

デザイナー 有働幸司が影響を受けたもの

コレクションテーマと並行して流れているもの

言語化し始めた“サステナビリティ”

大量生産のサイクルは「洋服がかわいそう」。4つの「R」という柱の定義

文学性とファッションの交差

編集人が初めて[FACTOTUM(ファクトタム)]の展示会にお邪魔したのは15年前ほど。その時のコレクションはアメリカで前近代的な生活様式と自給自足の生活を続けている「アーミッシュ」がテーマになっていて、「実際に旅をして、アーミッシュのコミュニティも現地も見に行った」と話すデザイナーの有働幸司さんの独特の視点や、その行動力にも強い興味を持った。その頃はまだギリギリ、ネットやスマホに情報が氾濫する前夜だった。

ファッションではデザイナーが何らかのインスピレーションを得てコレクションテーマにするのは普通だが、その後の[FACTOTUM]のコレクションは、そうした地域性だけでなく、映画、音楽、そして特に文学作品や作家をテーマにしたものなど幅広く、各テーマにも独特の深淵さが感じられた。

なんと言ってもそのブランド名が、アメリカの作家・チャールズ・ブコウスキー『ファクトタム』という作品名に由来しているのだから、このブランドに文学性が宿っているのは不思議ではない。

とはいえ[FACTOTUM]のプロダクトは極端にテーマに縛られているわけではなく、ベーシックでスタンダードなクリエイションにテーマ性がアクセントとなっていたので、常に東京の人気ブランドであり続けていることも同時に理解ができた。

FACTOTUM 2021SSコレクションより

先日[FACTOTUM]から、“Organic”というプロダクトラインが立ち上がったという情報が入った時、少し久しぶりに展示会にお邪魔し、有働さんにお会いした。展示会で話をするうちに、もっと話を聞きたくなったので、後日取材という形で申し入れた。2004年の[FACTOTUM]立ち上げから17年。有働幸司が変わったこと、変わらなかったことを聞いた。[FACTOTUM]と有働幸司の現在地。

Text&Photo : 武井幸久(HIGHVISION)

デザイナー 有働幸司が影響を受けたもの

FACTOTUM 有働幸司 インタビュー

― 2021年SSシーズンのコレクション(Frederick Wood[フレデリック・ウッド]という作家の著書『In the life of a Romany Gypsy』からインスパイアされたという、イギリスのジプシー民族がテーマ)も、自分は勉強不足で全然知らない作家さんでした(笑)。でも有働さんに始めてお会いした頃の「アーミッシュ」のような、深いテーマ設定のクリエイションは続けられているんだなと。

有働幸司(以下 有働) : そうですね。毎シーズン必ずテーマは入れるようにしていて、それは映画だったり、アート、音楽、作家だったり、自分が今まで見たり聞いたりしたものからピックして行くことが多いです。クリエイションの柱を作る時には、まずテーマを決めて、それをどうファブリックなどに落とし込むか、というやり方なのですが、テーマを作ることで肉付けしやすいんです。

― それにしてもかなりマニアックな時もありますよね。今シーズンにしてもそうですが、「有働さん、こんな本を読んでいるんだ……」と驚かされることが多いです。やっぱり相当な読書量ということですか?

有働 : どうなんでしょう(笑)。でも大量に読むというよりは、比較的自分の好きなゾーンの中で読んだものなんですけどね。そこまでマニアックじゃない時もありますし。

FACTOTUM 有働幸司 インタビュー

取材場所となった東京・代官山の「FACTOTUM LAB STORE」の奥はオフィス。その本棚には有働さんが影響を受けた本や資料が数多く並んでいた。

FACTOTUM 有働幸司 インタビュー

[FACTOTUM]の服作りにおけるソースにもなっているヴィンテージ古着のアーカイブもアトリエに。時々放出されることも。

― でもそのピックアップするものは、「流行り」とかではないですよね。有働さんの中の時間の流れというのがあるんだろうなと思って見ていたのですが。

有働 : そうですね、流行りではないです。考えてみると、クリエイションを生み出す時って、結局自分が10代、20代に経験したり、感じたことが柱になっているんですよ。その頃に感じたものを小分けにしている感じかもしれないです。洋服で言えばやっぱりアメカジで。50年代のジェームス・ディーン的なデニムのスタイルに始まり、60年代のサマー・オブ・ラブや70年代のヒッピー的なスタイルが格好いいと思ったり。そこから繋がってビートニクを知って、[FACTOTUM]の由来であるチャールズ・ブコウスキーに出会って、みたいな流れがあるんですが。

FACTOTUM 有働幸司 インタビュー

雑誌の取材でチャールズ・ブコウスキーの遺族の方に会うことができて、直接もらったという『FACTOTUM』も本棚に。

― そう繋がってくるところがやっぱり文学的ですよ(笑)。ちなみに一番好きな作家というと誰になりますか?

有働 : となると、村上春樹ですね。僕は小さい頃から本を読んでいたわけではなく、高校の頃に村上春樹の『ノルウェイの森』とか初期の3部作あたりに出会って、読むようになったんです。村上春樹さんもアメリカ文学とかお好きじゃないですか。そこから(J.D.)サリンジャーとか色々知るようになって。

― なるほど。その話をお聞きすると、何となく今への繋がりが分かる気がします。じゃあ音楽的な部分も。

有働 : あの人はどちらかというとジャズで、僕の方はロックだったりもしますけど、やっぱり影響は受けていますよね。

FACTOTUM 有働幸司 インタビュー

コレクションテーマと並行して流れているもの

― [FACTOTUM]はシーズンテーマも割と明確ですが、テーマに引っ張られるというよりも、常に[FACTOTUM]らしさはありますよね。

有働 : そこのバランスは常に考えていますね。線引きは、作ったものをちゃんと自分が着られるか。あとは例えば去年買ってもらった服に、新しい服がコーディネートできるかどうか。その辺は毎シーズン、プロダクトに落とす時に意識しています。

― そういう作り方はブランドを始めた当初からですか? 例えばシーズンによってまるで違ったりするブランドもありますよね。特にモードではクリエイティブディレクターが交代すると、違うブランドになってしまうようなところもあって、個人的にそういうのは少し無責任だなと思って見ているところがあるのですが。

有働 : 2004年の立ち上げからブランドコンセプトに書き入れていたものなのですが、「リアルクローズ、その基盤になるテーラード、ミリタリー、ワーク」という基本は崩していないですね。ただ、長くやっている中でコレクションの規模も大きくなってくると、あれが欲しい、これが欲しいとアイテムも広がってくるんです。そこで最終的に売れないものも作ってしまったこともあります。ただ、洋服作りというのは実験でもあると思うので、正直作ってみないと分からない部分もあります。うちのブランドのお客さんの多くは比較的ベーシックなものが好きなのですが、中にはコレクションピース的なものが好きな方もいるし、そこはバランスですよね。でも、そういう中で、「セールをしない定番」というものも長い年月の中で形成されてきました。

― それはどの辺のプロダクトですか?

有働 : うちの場合はデニムですね。ブランドスタート時からアップデートは繰り返しているんですが、大幅なシルエットだとか、バックポケットのステッチはデザインを変えていません。最初はストレートとスキニーからのスタートで、要望を受ける形でテーパード、シューカットいう裾が広がったものやスラックス型のスラックステーパードなどバリエーションは増えました。2017年AWに少し大きなリニューアルをして、腰裏のマーベルトをなくしたり、レザーのパッチをやめて、よりミニマルにしたんです。

FACTOTUM 有働幸司 インタビュー

― 定番になっているのは一定のファンがいる証でもあると思うのですが、デニムにおける[FACTOTUM]らしさとはどういう部分ですか。

有働 : いわゆるヴィンテージを追求というよりも、「デニムを履いてエレガントに見せたい」というのがスタイルのベースにありますね。いわゆる激しく色を落としてヒゲをつけた加工というよりも、なるべくふわっとサラッとする感じというか。ヴィンテージライクなスタイルに合わせてもいいし、テーラードのジャケットとか、いろんなスタイルに合わせられるようにしています。

FACTOTUM 有働幸司 インタビュー

言語化し始めた“サステナビリティ”

― 今はデニムを生産するときに「大量に汚染排水が出る」などの問題も指摘され始めていますが、何か対策はされていますか?

有働 : それはちょうど追求し始めました。うちのデニムは、立ち上げの段階から生地屋さんも工場もずっと一緒なんです。僕らからの提案というのもあるんですけど、岡山の産地の方がそういう取り組みに変化してきているんですね。水の問題でいうと、「エアーミスト」と言って、水じゃなく霧状にして色を落としたりとか、新しい機材や加工方法がどんどん研究されていますので、そういうのを取り入れたりし始めましたし、今後はもっと追求します。その延長で、2020年SSから、オーガニックの糸を使ったシリーズを新しく作ったんです。いま僕が着ているのは、ウズベキスタンの「ホワイトキング」というオーガニックコットンを使ったシャツです。

FACTOTUM 有働幸司 インタビュー

― いわゆる「オーガニック」も、定義が曖昧だったものが、最近は世間でも追求され始めましたよね。

有働 : 普通みなさんがオーガニックコットンで想像するのは、生成りで「なんか混じっている」みたいな(笑)ものだと思うのですが、ウズベキスタンのこの「ホワイトキング」は、高度1200メートルの地帯で栽培をしているので、空気が乾燥していて虫もいないし、綿花がキレイに育つんですよ。高地で作っている綿花と言えば、いま話題になっている新疆綿とかもあるのですが、正直ウズベキスタンもどういう風に作っているのか分からないので、コロナが落ち着いたら現地に行ってみようと考えています。

― そういう部分も含めたサステナビリティが、ファッションや作り手にも求められる時代になっていますよね。

有働 : このオーガニックのシリーズは、実は4年前から始めていたんです。ただ特に「オーガニックを使っています」とはアピールしてはいなかったんですね。でも、今の時代はそういう取り組みをより分かりやすく、言葉も含めて見て取れるようにした方がいいかなということで、シリーズ化したんです。セールにもかけずに、ベーシックなアイテムとして長く着れるラインにしたいなと思っています。

FACTOTUM 有働幸司 インタビュー

FACTOTUM 有働幸司 インタビュー

[FACTOTUM]が2020年よりスタートした“Organic”シリーズ。

大量生産のサイクルは「洋服がかわいそう」。4つの「R」という柱の定義

FACTOTUM 有働幸司 インタビュー

― 20年近くブランドをやって来られて、世の中もファッションもかなり変わっってきましたが、その辺の流れは有働さんはどう捉えています?

有働 : 3年前くらいに「[FACTOTUM]をもっと大きくしよう」という流れの話をいただいたんですね。国内でも店舗を増やして、世界でも店を出そうと。自分も「次のステップとしてはアリかな」と思って資本提携してスタートしたのですが、僕はずっとデザイナー=オーナーでやってきたので、違う目線が入ってくるとクリエイションの流れが全然変わってしまうと気づいたんです。もちろん「それでいい」という人もいますけど、僕はやっぱり身の丈に合った感じで、丁寧に服作りをやっていきたいと思って提携を解消したんです。

― それは大きな変化でしたね。

有働 : だから今は再スタートの時期なんです。インディペンデントに戻ったときに色々考えて、ブランドの柱になる考え方として、4つの「R」を掲げることにしました。「Release(リリース)」はいわゆる新作コレクションのこと、「Respect(リスペクト)」はコレクションにテーマ性があるので、そこに敬意をはらう形でリソースとなった古着や本、音楽などを店頭に並べたりするようにしました。「Remake(リメイク)」はファーストサンプルやデッドストックをアトリエで解体してリメイクするもので、「Revive(リバイブ)」はキャリー品を染め直したりカスタムしています。

FACTOTUM 有働幸司 インタビュー

「FACTOTUM LAB STORE」で販売されている「Remake」シリーズ。サンプルなどを解体して新しいプロダクトに。

― そうしたアイデアには何かきっかけがあったのですか。

有働 : 先ほどのブランドを大きくするという話があったときに、大量に作って大量にセールするとか、世の中が求めていないものを作りすぎたり、提案しすぎたりするのは洋服がかわいそうかなという気持ちになったんですよ。それだったら「今あるものをどう使うか」をブランドのサブメッセージにした方がいいと感じて、4つの「R」というシリーズを始めました。

― そういう時代だと思います。やっぱりシーズンで作られるものって、プロダクトとして検証されていないものが多い気がするんです。自分も個人的に世間的に名の通ったブランドのシーズン品も買ってきましたが、そういうモノって普通に着ているだけで褪色したり、肘の部分が薄くなってしまったりして、服としては良くてもプロダクトとしては残念なものが多いですよね。有働さんが考える「責任感」みたいなことは、すごく共感します

有働 : はい。“強くてすぐ消費されるもの”よりも、他の服とか他のブランド、古着と一緒にタンスに並べてもらうくらいのポジションが[FACTOTUM]のプロダクトとして一番求めるところかなと思いますね。

― ここから先はどのように考えていますか?

有働 : 今すぐではないですけど、そういったことを伝えられているのは現在国内だけなので、もう一回海外にも出て、日本製のものづくりやサステナブルなこと、コレクションのテーマに裏付けるものを、伝えられたらと考えています。それは昔のような「目標としてのパリコレ」だったり、「海外の有名百貨店に」、みたいなことではなく、もっとドサ回り的なことです。自分が「こういうお店に扱って欲しい」と思うところを探してアプローチして、扱ってもらうような関係性ですよね。今はコロナで海外にもなかなか行けないけど、そういうことをイメージしながらやって行こうと思います。

FACTOTUM 有働幸司 インタビュー

有働幸司 Koji Udo
1971年生まれ。東京モード学園卒業後、(株)BEAMに入社。退社後ロンドンに留学し、帰国後、国内ブランドの立上げに参加。 その後独立し、2004年に[FACTOTUM]をスタートさせる。2006年に東京コレクションにデビュー。2012年にシンガポールにてMFWに参加。初の海外コレクション発表。2018年「ベストジーニスト賞」、「Amazon Fashion Week TOKYO×協議会選出部門」を受賞。

[CONTACT]
FACTOTUM LAB STORE
住所 : 東京都渋谷区恵比寿西2-17-16 代官山TKビル 101号
TEL : 03-5428-3434
https://factotum.jp

Content

文学性とファッションの交差

デザイナー 有働幸司が影響を受けたもの

コレクションテーマと並行して流れているもの

言語化し始めた“サステナビリティ”

大量生産のサイクルは「洋服がかわいそう」。4つの「R」という柱の定義

Editorial

Editorial

Mail magazine

購読はこちらにアドレスを入力するだけ。
お得な情報や厳選した記事を中心に
程よい頻度でお届けします(月2回程度)


 

inGENERAL STORE

ここでしか買えない
“ワンランク上のスタンダード”
コラボレーションアイテムなどを販売します

検索候補

inGENERAL 2020 © All Right Reserved.

Follow us

Mail magazine