［inGENERAL FASHION］2021年のチープシック（春夏編 2/3）

前回に続きお届けするinGENERALの考える“2021年のチープシック”。（「“2021年のチープシック”って何なの？」と思われた方は前回の記事をご参照ください） 今回は「新定番」と言えるものを中心に3つのコーディネートを提案する。

「定番」とはつくづく“結果論”だ。作り手が「定番にしたい」と思っても、そこに反応する人が少なければ継続しない。ある一定数の人が“しっくりきた”ものや“使える”と思ったものが定番の道を歩んでいる。

1970年代くらいまでに「メンズファッションの定番」は一旦定義されてしまった感があるが、もちろんその後に定着したロングセラーは存在するわけで、そうしたものは「新定番」と呼ばれることも多い。

今回紹介するのは、毎シーズン更新もされているものの、そのエッセンシャルな部分は変わらない3つの「新定番」を使ったコーディネート。巷で「それいいね、どこの？」という会話とともに継続してきたアイテムをチョイスすれば、数年で廃れるようなことはない。それが“2021年のチープシック”なのだと思う。

Photo 畑中清孝 Kiyotaka Hatanaka（UM）
Styling 井田信之 Nobuyuki Ida
Model KATSUYASU

スポーツジャージがファッションになったのは1980年代以降。特に［adidas（アディダス）］や［Fred Perry（フレッドペリー）］のトラックスーツは、さまざまなカルチャーとも結びついた代表格だ。ただその拡大とともに、ファッションとして着ているのか、スポーツや部屋着の延長で着ているのかが曖昧になってしまったところがある。

そこに「あくまでもファッションとしてのジャージ」を打ち出したのが、［NEEDLES（ニードルズ）］。このトラックスーツはさまざまなバリエーションですでに10年以上継続して販売しており、今や海外のミュージシャンにまで浸透。日本のセレクトショップ「ネペンテス」のブランドという枠を超えるアイコニックなアイテムになった。トラックジャケット、トラックパンツ単体でも使えるが、セットアップになると独特の迫力が。単体、セットアップ、どちらでも“らしさ”が出せるマジックワードローブだ。

ファッションの遊び心に火をつけてくれる［NEEDLES］に合わせたのは、日本のハットブランド［CA4LA（カシラ）］。広めのツバの縁が直角に折れ曲がった特徴的なフォルム、そこにラフに毛糸をワンポイントであしらうなど、ハットの可能性を広げる秀逸なデザイン。今回はそのハットに［R.I.P. Charm（アールアイピー　チャーム）］の“生け花ブローチ”をプラス。マグネット式なので、生地を痛めずにジャケットやハットに装着出来、道端の花やドライフラワーなどを生けることができるワンポイントの遊びアイテムだ。

手元に合わせたのも［R.I.P. Charm］のユニークなアクセサリーたち。子どもが好きな“フエラムネ”の形をシルバー925で成形したリング、アンティークタイプライターを解体してキーを再利用したリング（「SHIFT FREEDOM」キーを使用）、そして腕には“ギーク・ウォッチ”の愛称とともに過去のレア・デジタルウォッチを掘り起こしたものをチョイス。これは1983年に［SEIKO］が開発した世界初の録音再生機能付きデジタル時計。映画『ゴーストバスターズ』でも使用されたもので、コンディションの良いものはなかなか見つからないという。スマホ時代の今は「お役御免」のアイテムだが、そのノスタルジックさはアンティークの粋に入りつつある。

［INOFORMATION］
トラックジャケット¥26,000+TAX、ブーツカットトラッツクパンツ¥21,000+TAX(NEEDLES/ネペンテス)、ハット¥26,000+TAX(CA4LA/CA4LA プレスルーム)、眼鏡¥44,000+TAX(EYEVAN 7285/アイヴァン 7285 トウキョウ)、生け花ブローチ¥19,000+TAX、笛ラムネリング¥30,000+TAX、落第リング¥55,000+TAX(以上すべてR.I.P.charm/ R.I.P. STORE）、デジタルウォッチ¥100,000+TAX(VINTAGE SEIKO/ R.I.P. STORE)、モックシューズ¥49,800+TAX(nonnative/カバーコード)

［CONTACT］
ネペンテス
TEL：03-3400-7227
https://nepenthes.co.jp

CA4LA プレスルーム
TEL：03-5773-3161
https://www.ca4la.com

アイヴァン 7285 トウキョウ
TEL：03-3409-7285
https://eyevan7285.com

R.I.P.STORE
住所：東京都渋谷区神宮前3-7-6 ワタリウム美術館ミュージアムストア
ON SUNDAYS 地下中二階
https://www.instagram.com/donald_death/?hl=ja

カバーコード
https://coverchord.com/

こちらも同じく「ネペンテス」から生まれた［ENGINEERED GARMENTS（エンジニアド ガーメンツ）］のジャケットとファティーグパンツのセットアップ。このブランドでは“セットアップ売り”というより、同じ生地素材を使ったアイテムをひとつのシーズンに複数投入しているので、自分の好みでチョイスが可能なことが特徴。

また同じ素材を別のシーズンでリピートすることも多いため、パンツを買い替えたり、ジャケットを変えることで異なるシルエットや着こなしでセットアップが楽しめる。これもある種の定番のあり方。

今回のコーディネートでは上質な素材、遊び心のあるデザインが特徴の［COMME des GARÇONS SHIRT（コム デ ギャルソン シャツ）］の古着をチョイス。特にフランス製のものはやや高額だが、古着の中にもコンディションの良いものはあり、アーカイブデザインの中にも「いま欲しい！」というものは多い。勝負しているフィールドは異なるブランドではあるものの、この組み合わせは今の時代らしいと言えるのではないだろうか。

［INFORMATION］
ジャケット¥36,000+TAX、ファティーグパンツ¥23,000+TAX、ショルダーベスト¥21,000+TAX(ENGINEERED GARMENTS/エンジニアド ガーメンツ)、シャツ¥33,818+TAX(ARCHIVE COMME des GARÇONS SHIRT/RAGTAG 原宿店)、スクェアトゥのシューズ¥62,000(foot the coacher/ギャラリー・オブ・オーセンティック)

［CONTACT］
エンジニアド ガーメンツ
TEL：03-6419-1798
https://nepenthes.co.jp

RAGTAG 原宿店
TEL：03-6419-3770
https://www.ragtag.jp

ギャラリー・オブ・オーセンティック
TEL：03-5808-7515
https://galleryofauthentic.jp

ここでまさに“新定番”と呼ぶにふさわしい、2019年AWシーズンにスタートしたブランニューなブランド［HERILL（ヘリル）］の“ハイゲージ・シースルーニット”をご紹介。［HERILL］は「日本国内の最高級な技術・経験によって裏打ちされた伝統ある工場と新しいコンセプトの素材開発を行い、真面目に面白いと思えるプロダクトを生み出していく」というコンセプトを掲げており、まだデビューから日も浅いながら大注目の存在に。

「ありそうでなかった」、ラミー糸（苧麻）を使用したハイゲージのニットは、透けて見えるほどの薄さが特徴。この薄さを利用して合わせたいのが、遊び心のあるグラフィックのTシャツやカットソーだ。今回チョイスしたのは映画『THE 40 year old Virgin』の古着Tシャツ（スタイリスト私物）。“40歳の童貞”をテーマにしたヌケたTシャツがクドくないレベルで透け見え。もちろんインナーは選び放題で、グラフィックのないカラーものでも変幻自在に楽しめるニットだ。

今回合わせたパンツは［Yves Saint Laurent（イヴ サンローラン）］の古着スラックス。こうした作りの良いオールドメゾンの古着は、何周か回って再び脚光を浴びており、価格も徐々に高騰中。しかしながら、熱心に探せばそれなりのタマも出てくるかもしれない（あるいは家に眠っているかもしれない）ので、古着屋やメルカリ、スリフトショップ系をチェックする楽しさもありそうだ。

［INFORMATION］
ニット¥38,000+TAX(HERILL/にしのや)、フレアスラックス¥28,000+TAX(70’s Yves Saint Laurent/ISSUE)、眼鏡¥44,000+TAX(EYEVAN 7285/アイヴァン 7285 トウキョウ)、フレンチローファー¥44,000+TAX(foot the coacher/ギャラリー・オブ・オーセンティック)、ユーズドのT-シャツ(スタイリスト私物)

［CONTACT］
にしのや
TEL：03-6434-0983
https://www.herill.com

ISSUE
TEL：03-3712-1838
https://issue.theshop.jp

アイヴァン 7285 トウキョウ
TEL：03-3409-7285
https://eyevan7285.com

ギャラリー・オブ・オーセンティック
TEL：03-5808-7515
https://galleryofauthentic.jp

全3回でお届けするinGENERALの“2021年のチープシック”春夏編”の第3回は、3月中旬に公開予定です。