ほしいものが、ほしいわ。[編集人ブログ]
糸井重里さんの80年代の名コピーを思い浮かべながら書いた、編集人の徒然ブログです。
糸井重里氏1988年西武百貨店の名コピー
“ほしいものが、ほしいわ。”
これは現在はすっかり『ほぼ日』の方になっている糸井重里さんが、コピーライター時代の1988年に西武百貨店のために書いた名コピー。
糸井さんの広告コピーは秀逸なことはもとより、経年によって多少ニュアンスは変わったとしても、どこか時代を超えて響いてくるパーマネントさがあるように感じます。
1988年といえばバブルまっさかりで、多くの人がモノやあれやこれやを買うことに夢中になっていた時代。
このコピーは巧みに言葉遊びをしながら「モノはたくさんあるけど、自分が欲しくなるようなものがないので、そういうものがあればいいのに」と、すでに飽和を始めた消費社会を俯瞰して皮肉っているようなところもあります。それをたった11文字の中で、ちょっとワガママな女性像を想起させるようにしているのも実に見事です。
そんなアイロニックなコピーを百貨店側が受け入れたのは、当時数字的にも文化的にも勢いのある西武グループだったせいか、「うちは良いモノをたくさん準備しているので、そういう人を満足させることができる」という逆説的自負があったのかもしれません。
“ほしいものが、ほしいわ”
このコピーが世に送り出されて30年以上も経つのに、最近自分はこのコピーを思い浮かべるシーンが増えてきました。
いま何が食べたいのか、何を持って帰ったらいいのかもわからずにコンビニの中をうろうろ歩くとき。
何気なくECサイトを覗いて、「ほしいもの」を探し始めたとき。
「ほしいも」ではない。
頭の中にはこの“ほしいものが、ほしいわ”が循環しています。
撮影などの合間に「武井さん、最近何か欲しいものあります?」と、ときどき知り合いに聞かれても、すぐに答えられない。(いまはライカQが欲しいですが)
昔は自分の好きなお店に入ると、「この店のもの全部欲しい!」と思ったりもしたのですが、そういうモードはいつの間にかどこかに消えてしまいました。
かと言って断捨離をしているわけでも、物欲がゼロになったわけでもない。
心の中では常に「何か欲しいもの」を探している自分がいます。
何かをきっかけに、急に堰を切ったようにモノが欲しくなるときもあります。
この感じは、誤解を恐れずに言えばどこか性欲にも近い気も。
特にコロナの自粛中はそうでした(性欲の話ではない)。ニュースサイトを見てもコロナのニュースばかりなので、気分転換含めてECサイトネットサーフィンばかりしていた気がします。
「自分のいまの生活に足りないモノはなんだっけ?」と思いながら、のんびり買い物をする時間は結構楽しかった。
確かにずっと物欲がムラムラしていたら、いくらお金があっても足りないので、どこかでちゃんとセーブしているのでしょう。でも「ほしいものがほしい」枯渇感って、やっぱりありますよね。
何か欲しいものがあるときは、それに向けて仕事をがんばったりもするし、
欲しいものがあることは、やっぱり幸せなんだろうと思います。
このサイトは「物欲だらけのオンラインマガジン」にするつもりはないのですが、必要なモノしか要らない、無駄なものは欲しくない、そんな“ほしいものが、ほしいわ。”と思っている人が見て、欲しいものを見つけてくれるようなサイトになればいいな、と思っています。(武井)
ちなみにこのサイトの取材用にいま欲しいのは、「ライカQ」。迷ってます。
ライカ デジタルカメラ ライカQ(Typ 116) ブラック
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