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Fashion

2020.10.15

[inGENERAL 製品哲学研究所]第2回
THE NORTH FACE(ザ・ノース・フェイス)の“バルトロ ライト ジャケット”

ロングセラーの商品には哲学がある。気になる逸品の魅力を紐解く新シリーズ「製品哲学研究所」、第2回は抽選販売になるほどの人気ダウンジャケット、[ザ・ノース・フェイス]の“バルトロ・ライト・ジャケット”

[inGENERAL 製品哲学研究所]第2回 THE NORTH FACE(ザ・ノース・フェイス)の“バルトロ ライト ジャケット”

Content

開発者に聞く“バルトロ ライト ジャケット”の真価

ハイスペックダウンジャケットの機能とスペック

バルトロ ライト ジャケットの生まれた背景

“バルトロ効果”シルエットとは?

供給不足の理由とサステナビリティ

開発者に聞く“バルトロ ライト ジャケット”の真価

近年その人気が加速し、供給不足の側面から抽選販売方式にまでなっている[THE NORTH FACE(ザ・ノース・フェイス)]の人気アイテム“Baltro Light Jacket(バルトロ・ライト・ジャケット)”。保温性を追求したダウンジャケットとして登場し、瞬く間にストリートでも支持を集めたこのアイテムの真価とは。今回はこのアイテムの開発に携わった、ザ・ノース・フェイスの大坪岳人(おおつぼ がくと)さんに、その開発秘話から、製品に込められた哲学まで話を聞いた。

Photo(Model) 畑中清孝 Kiyotaka Hatanaka(UM)
Styling 井田信之 Nobuyuki Ida
Model 廉太郎 Rentaro(BELLONA model agency)
Hair 深見真也 Shinya Fukami(Y’s C)
Edit & Text 武井幸久 Yukihisa Takei(HIGHVISION)
取材協力 ザ・ノース・フェイス(ゴールドウイン)

ダウンジャケット¥55,000+TAX、パンツ¥13,000+TAX (THE NORTH FACE / ゴールドウイン カスタマーサービスセンター)、その他スタイリスト私物

ハイスペックダウンジャケットの機能とスペック

[ザ・ノース・フェイス]の“バルトロ”がなかなか買えないらしい」と聞いたのは一昨年頃だっただろうか。「真冬の天体観測や雪上ハイクにも対応できる、高い保温性を持つ防寒ジャケット」として登場したボリューム感のあるダウンジャケットだが、アウトドアアクティビティをする人だけでなく、ストリートでもその人気は拡大していった。その人気を拡大させた背景には何があるのかを、今回の「インジェネラル製品哲学研究所」では追求していきたい。まずはその製品スペックを整理しておく。

このジャケットには、日本を代表するダウンメーカーの「河田フェザー」による、高度な洗浄技術によって汚れを徹底的に除去した「クリーンダウン」が使われている。さらに特殊セラミックスの遠赤外線効果で優れた保温効果が持続する「光電子®ダウン」を封入しており、ダウン自体も高い保温性を確保している。表地には30デニールのGORE-TEX INFINIUM™PRODUCTSの2層構造を使用しているので、防風性とともに耐水性もあり、雪や小雨程度の濡れであれば十分にカバーしてくれる仕様になっている。

保温性、耐水、透湿性などにおいて優れた機能性を有したダウンジャケットながら、その見た目のボリュームに反して重量はLサイズで910グラム。着用したときに思わず「軽い!」という感想が漏れるのが、この“バルトロ ライト”の特徴だ。出番はやはり冬場。寒冷地はもちろん、都会でも冷え込みの強い日や、冬場のアウトドアアクティビティに備える一着として、その汎用性は高い。それにしてもなぜこのダウンジャケットがここまでの人気を獲得したのか、その理由を探るべく、今回はこの“バルトロ ライト”の開発者の一人である、ザ・ノース・フェイスの大坪岳人さんにお話を聞くことができた。

“アウトドアウェアのデザインは、常にトレード・オフがつきまとう”

取材に応じてくれたザ・ノース・フェイスの大坪岳人さん。同ブランド一筋16年のベテランで、“バルトロ ライト ジャケット”の開発にも携わった中心人物。

今回[inGENERAL(インジェネラル)]の取材に応じてくれた大坪さんは、2004年に株式会社ゴールドウインに入社以来、現在まで[ザ・ノース・フェイス]一筋16年のベテランだ。同じ事業部の中でも長年同ブランドに携わっているのは大坪さんとその上司のみ。事業部間の移動は当たり前のメーカーにおいて、このキャリアは珍しいという。

「僕が入った頃の[ザ・ノース・フェイス]は、アウトドアブランドながらアパレルブランドからの別注やコラボレーションが増えてきた時期でした。まだ当時は珍しかったと思います。よりデザイン性の強い[ザ・ノース・フェイス パープルレーベル]ができたのもその頃で、商品はもちろん、よりブランドの背景やロゴ、お店、製品のストーリーを大切にしていこうと気運が社内でも一層高まっていました」

編集人が[ザ・ノース・フェイス]のイメージや、アイテムに変化を感じ始めたのもこの頃。特にアパレルアイテムのパターンの変化を感じていた。

「あくまで[ザ・ノース・フェイス]の場合、“アスリートファースト”であるという考え方は変わりませんが、そこを追求していくと、材料、設計、そしてパターンにも一貫性が出てきます。よく我々は“機能がデザインを決定する”と言うのですが、動いている時に動きやすく、止まっている時にもその機能を発揮するものを考えた結果として、それぞれのプロダクトにウチ独特のパターンが生まれてきているのではないかと思います」

近年は機能性追求型のアパレルブランドも増えてきてはいるが、基本的にシーズンごとに新たなコレクションを提案するファッションブランドと、[ザ・ノース・フェイス]のようなアクティビティ発想からプロダクトが生まれるブランドでは、その開発経緯も異なる。その点を大坪さんは次のように話してくれた。

「すでに発売したアイテムでも、常にどこかアップデートできることはないかと考え続けています。実際に自分たちが使ってみたり、お客様から挙がってきた声を元に素材やシルエット、ディティールを改善していくのです。僕がこういうアイテムの開発をしていて感じることは、『常に“トレード・オフ”がつきまとう』ということです。

例えば暖かさを向上させるにはダウンの量を増やすことになりますが、その分重量やボリュームが出てしまう。逆にダウンの量を減らせばスリムになりますが、その分保温性が下がってしまう。丈夫にしようと思えば重くなり、軽くしようと思えば丈夫さが犠牲になる。こういう足し算・引き算、素材と価格などのバランスを考えた結果がプロダクトになっていくんです」

バルトロ ライト ジャケットの生まれた背景

大坪さんが開発に携わった“バルトロ ライト ジャケット”が市場に登場したのは2010年。イメージ的にはもっと以前からありそうな気もするが、実は同ブランドの中では比較的近年の定番だ。

「“バルトロ ライト”というように、この商品には元があって、それが“バルトロ ジャケット”や“ヒマラヤン パーカ”、“アークティック パーカ”というような、文字通り極地向けのダウンウェアです。これらはまさに南極や北極などでの活動のために作られているので、街で着たら完全にオーバースペックです。でも、例えば冬場の釣り、寒冷地で写真を撮ったりする人、オーロラ観察などの海外旅行、あとはスノーリゾートへのアプローチなど、割と寒冷地で“待機している時間”が多い人向けに開発が始まったのが“バルトロ ライト”です。

『開発裏話あるある』ですが(笑)、周囲からは割と反対の声もありました。ハイスペックなモデルをダウングレードさせたものを出すのはどうなのか、とか、その頃街では薄手のスリムなダウンが主流だったので、『売れないんじゃないか』という予測もあり、卸先のお店も消極的だったのですが、いざ販売を開始したら予想を超える人気アイテムになったんです」

手前は“バルトロ ライト ジャケット”のベースにもなっている極地向けSUMMIT SERIES(サミットシリーズ)の“ヒマラヤン ジャケット”。ダウン分量も多く、こちらはポケットの外側にもダウンが入っている。

一方の“バルトロ ライト ジャケット”のポケット外側にダウンは入っていない。使用用途に合わせてダウン分量をコントロールしていることがわかるディティールだ。

実は“バルトロ ライト”開発当時のファーストサンプルの段階から少し修正変更した点があり、発売直後から現在まで続く人気の理由になっているのではないかと大坪さんは分析している。

「ファーストサンプルでは、極地向けのハイスペックモデルに比べて全体的にダウン分量を減らしていたんですが、肩から二の腕にかけてのダウンボリュームはあえて元に戻す感じで増やしたんです。まさに“寒い”をジェスチャーするポーズを思い浮かべてもらうと分かると思いますが、人間って寒い時は自然に両手を二の腕のところに持ってくるじゃないですか。あれって肩から二の腕が寒さを感じるからなんですよね。だからあまり寒さを感じないお腹のあたりのダウン分量は減らしつつ、肩まわりのダウンのボリュームはキープするようにしたんです。そのことがこのモデルの機能面とデザイン面を形づくってくれた要因だと思います」

“バルトロ ライト ジャケット”の視覚的特徴でもある腕まわりのボリューム。極地向けモデルに近いダウンの分量を配することで、寒さを感じやすい肩まわりの保温性を確保している。

大坪さんが解説するように、“バルトロ ライト”は随所のダウン分量のメリハリが印象的だ。たとえばコールドスポットになりやすいフロントジップ部分のダウンも、下から上にかけてダウンの分量が変わるように設計されている。つまり体躯の上の方に重点的にダウン分量を増やしている。これは気づくとなかなかユニークなポイントだ。

フロントセンターのジップ上のパーツを見ると、上に向かうにしたがってダウン分量を増やしていることがわかる。

また風の侵入も多い首回りには、フードの中にさらに襟状のダウンパックを配するなど、人間が寒さを感じやすいポイントのダウン分量を上げ、それ以外の部分は少なめにすることで、重さやシルエットのもたつきを解消している。また、極地向けモデルと比べて丈を短く設計した点も含めて、充分な機能性とデザイン性を兼ね備えたものになることに貢献。まさに“機能がデザインを決定する”という[ザ・ノース・フェイス]の製品哲学が顕在化しているプロダクトと言える。

頭上までダウンが入っているボリューム感のあるフード。

ダウンフードの内側には、襟のような形で首元をサポートするダウンパーツが。これが首元の暖かさを引き上げている。

袖の切り替えと2色の理由

“バルトロ ライト”のデザイン面で象徴的なのが、袖と肩まわり部分の切り替えと、それが同一の切り替え色になっている点だ。ちなみに“バルトロ ライト”の表生地は、防風性と耐水性を兼ね備えたGORE-TEX INFINIUM™ PRODUCTSを全面に使用しており、生地の厚さも同じなので、あえて色を変える理由はないように感じる。

それでも色変えをしているのには、雪の日や視界の悪い日に「単一色よりも2色の方が視認性が上がる」という視覚的機能性と、従来の[ザ・ノース・フェイス]のプロダクトにおいて、ザックを背負った時の補強用に肩まわりの生地を切り替えていた同ブランドならではのデザインレガシーのひとつでもあるという。また肘部分は可動域確保のためにも生地を切り替えているという側面もある。

実際に肘や肩まわりの箇所は汚れ、擦れや破れが起きやすい箇所でもあり、万が一破損した場合も専門工場でのリペアや生地の貼り直しもしやすいという、これもアフターケアまで含めた発想に基づくデザインだ。

“バルトロ効果”シルエットとは?

ダウンジャケット¥55,000+TAX、パンツ¥13,000+TAX (THE NORTH FACE / ゴールドウイン カスタマーサービスセンター)、その他スタイリスト私物

随所に機能性から生まれたデザインが施されている“バルトロ ライト”が人気の理由は上記で十分伝わるだろう。しかし、それにしてもなぜこのモデルがストリートでも突出した人気を獲得しているのだろう。もちろん各メーカーからも機能性やデザイン性の高いダウンアイテムは多く出ているが、ここまで広く浸透しているのには、また別の側面もあるのではないかと大坪さんは考えている。

「機能を求めたデザインが結果的にファッション的にも着やすいものになっているのだと思います。着丈の短かさはパンツとの相性もいいし、一着でも合わせやすい。あと十分暖かいので、中に着るのは薄手の服でいいという点も都市生活にも合っているんでしょう。カットソー1枚で着る感じも格好よく見えますし。

あと、よく僕らは“バルトロ効果”と言っているんですが(笑)、もともとボリューミーなので、大柄の人でも小柄の人でもシルエットの雰囲気が変わらないというか、誰が着ても似合うのが“バルトロ ライト”の特徴だと思います」

供給不足の理由とサステナビリティ

“バルトロ ライト ジャケット”は付属のスタッフサックに小さく畳んで収納も可能。旅先に持っていくのにも便利だ。

大坪さんの言葉通り、着る人を選ばない“バルトロ ライト”の人気は年々上昇しており、ここ数年はシーズン立ち上がりのタイミングでの抽選販売という形式を取らざるを得ない状況になっている。それには動物の天然素材であるダウンフェザー供給の限界があるからだという。

「本来このプロダクトを必要としている方にはちゃんとお届けしたいのですが、ダウン自体が“生き物”なので、食用で採れた羽毛以上は使うことができないのです。無理に供給を増やそうとすると、クオリティに問題が出てきたり、偽装などを生むことにもつながってしまいます。あとはこの“バルトロ ライト”も工場で手作りをしているので作れる量にも限界があるんです。もちろん徐々に生産量は増やしてはいるのですが……。

“バルトロ ライト”は、毎年買い換えるようなものではないし、ダウンというのは正しく使えば劣化しないので、長く着ることができます。いまはダウンのリサイクルも進んできているので、新しいものが欲しくなったらぜひリサイクルに出していただければ。リサイクルダウンが浸透すれば、“バルトロ”ライト”に限らずダウンウェアももっとサステナブルになっていくと思います」

ちなみにこの冬、編集人は初めて“バルトロ ライト ジャケット”の購入を決めた。「なぜ多くの人がこのモデルを買い求めているのか」がずっと疑問だったが、大坪さんやプレスの方の話を聞けば聞くほど人気の理由がよくわかった。寒くなった頃に実際にこのダウンを着て、この記事を改めて読み返してみたい。きっとその頃には“バルトロ ライト”の虜になっていそうな気がする。

[IINFORMATION]
ザ・ノース・フェイス
バルトロ ライト ジャケット

¥55.000+TAX

[CONTACT]
INFO:ゴールドウイン カスタマーサービスセンター
TEL:0120-307-560
https://www.goldwin.co.jp/tnf/

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開発者に聞く“バルトロ ライト ジャケット”の真価

ハイスペックダウンジャケットの機能とスペック

バルトロ ライト ジャケットの生まれた背景

“バルトロ効果”シルエットとは?

供給不足の理由とサステナビリティ

Editorial

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